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2004年 07月 12日
去年の春、ひとりの漫画家がひっそりと亡くなった。
華倫変と書いて「かりんぺん」と読ませる奇妙な名前の奇妙な漫画家だ。 享年28歳 彼はヤングジャンプなどで「カリクラ」という、短編シリーズを書き、おそらくは限られた読者の中でのみ、心に刻まれた、いわゆるマイナーな漫画家だった。 彼の書く漫画から受ける印象の第1は、まず「絵がへたである」ということだ。 かなり稚拙な部類に入る絵で、それが彼の技術の限界なのか、あるいは狙ったものだったのかはわからない。 しかし、俺は彼のヘタな絵が嫌いではない。 というかむしろ好きである。 絵の好みは、うまい、へた、では決まらない。 うまくても魅力に乏しい絵もあれば、へたであってもなにかしら魅力を持った絵がある。 俺は華倫変の絵が好きだった。 特にペイブメントなどのロウファイロックを好んで聴いていた時期に、華倫変を読んでいたので、脱力系ヘタウマというものに対して新鮮な印象を抱いていた。 華倫変のヘタクソな絵は見ているだけでへろへろと力が抜けてしまうようなロウファイであり、そしてそこに魅力があった。 そんな稚拙な絵で描かれる華倫変の漫画は、その絵柄とは裏腹に・・・・・いや、その絵柄であったからこそか、なにか読み手の心に、うっすらとしたトラウマを刻むものであった。 強烈なトラウマとはちがう、引っかき傷のようなものを読者の心に残す、そんな漫画だった。 彼の一連の作品を一言で表現すると「変質者のいる風景」とでも言うべきものだ。 なにげない日常の中に、奇妙な人間が配置される。 その奇妙さとは、漫画的な奇妙さ、演出され創作された奇妙さとはまた違う、我々が現実の中で時々出会う、一瞬ドキリとしてしまう、おかしな人間達なのだ。 たとえば駅のホームでブツブツつぶやいていたかと思うと、突然奇声をあげる、「ちょっとおかしな人」、かかわりあいにならぬよう、目をそらし、その横を無言で走り去る、そんなタイプの人たち。 華倫変の漫画に出てくる人は、そんな「かかわるべきではないような人物」と、「うっかり関わってしまった人たち」の物語である。 奇妙、奇怪な言動をする人物と対面し、どうリアクションをとったらいいのかわからない・・・・・・そんな「うっかりかかわってしまった人たち」の、その心にうっすらと負った引っかき傷について書いている。 そんな漫画であると俺は思った。 ドラマチックなことはなにも起こらない。 ただ日常の中に「ちょっとおかしな人」がいる。 そして「おかしな人」とは、どうコミュニケートしたらいいのかわからない。 コミュニケートの断絶、といってしまってはオーバーだが、コミュニケートの無能、関係性が機能しないことの微妙な苦しみと、それによって生まれるトラウマについて書かれた作品が多い。 「カリクラ」1巻収録の、「AV」に登場する三好は、奇怪な人物である。 とあるインディーズアダルトビデオに男優として応募してきたこの男は、次第に自身の妄想的性癖を強固に主張し始め、そのあまりの確信ぶりにたじろいだAVスタッフたちは、やがて現場を三好に乗っ取られてしまう。 AV撮影現場の暴君として振舞う三好。 彼は自分の性的妄想が絶対であり、それが理解できない、ついていけないものを批難する。 彼の異様なテンションにおじけづいた気弱な人々は、彼の奴隷のようになっていく。 そんな奴隷の一人、AV女優の大乱真理子。 彼女は過去にレイプされたトラウマを持つ女だった。 そして三好はそんなトラウマを持つ真理子に対し、気の毒に思うような共感は持ち合わせておらず、かえって「レイプ」というシチュエーションに興奮し、彼女に過酷な撮影を強制しつづける。 ボコボコになぐって犯したり、するのだが、これが本当の愛だとか、愛しているのなら殴られることも平気なはずだとか、勝手なことを言ってばかりいる。 しかし真理子はそんな自己中心的な三好の言葉を信じて、自分は三好に愛されてるのだと思い込む。 この2人の間にだけ関係性は成立し、他のスタッフは三好と真理子にはかかわらないようにし始める。 そんなある日、三好は真理子にスカトロを要求する。 自分が排便したウンコを真理子に無理矢理食べさせようとする。 さすがの真理子もこれには強固に拒み、言うことを聴かない三好はブチ切れて撮影現場で暴れまくる。 「わがままをいうな!」「もっとひとの気持ちをわかる女になれ!」 「好き嫌いをいわない女になれ!」 だれもが、「それはお前に1番言いたい・・・・」と思うようなことを口走りながら、三好は真理子を撮影用ライトでなぐり、大怪我を負わせる。 入院した真理子をつきっきりで看病する三好。 真理子に対してなんの思いやりも持っていなかったはずの彼が、3日3晩、真理子の看病につきそう。 三好にとっては、「自分は真理子を愛している」という妄想は現実だったのだ。 そして真理子の怪我が回復した日、三好は真理子がAV出演で稼いだ金を全部持ち逃げしてどこかへ消えた。 ひとり残された真理子。 AV現場では三好以外に話をする相手がいない真理子はシンナーを吸いながら携帯ゲームをするだけだった。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 「おかしな人物」三好と、「関わってしまった」真理子。 ここで奇妙なのは、結局真理子は自分に対して思いやりのかけらもない三好としか関係を持てなかった、ということだ。 三好としか関係をもてない以上、その関係性も三好に合わせた異常なものにするしかない。 関係性を歪めてまでも、誰かと関わっていたい女、真理子。 そして歪められた関係性を結んだふたりと一切関わり合いをもたないよう「見て見ぬふり」をし続ける周囲のスタッフ。 このAV現場では三好以外の人間はみんな、なにかしらの心の傷を負ってしまったような気がする。 関わっても、関わらなくても、そこにある「変質者」が介入することによって、日常を送ることに負荷が加わってしまったのだ。 日常に負荷を加える「変質者」と、その負荷を避けることの代償にトラウマを負う周囲。 そして「変質者」と関わったしまったことにより自分に加わる負荷を、関係性を歪めることで回避しようとしたAV女優。 「奇妙な人物」により、日常が歪む様と、その歪んだ日常を自分の心に傷を追うことで回避する人々・・・・・・。 華倫変の書く漫画はそんな情景を描いている。 「変質者のいる日常風景」 一見普通に見えるが歪んでいる。 歪んでいるけど、それを声に出して言うことは出来ない。 それを言ってしまうとせっかく微妙なバランスで保っていた日常が壊れてしまうからだ。 だから、「歪んでいる」ことを口に出さず、見て見ぬ振りをする。 その代償として、心にひっかかれたような傷を負う。 華倫変が稚拙な絵で描いて見せたのは人間の稚拙な関係性の結び方であり、その心に負った稚拙な傷である。 ちょっと予定より長くなりすぎてまとまらなかったな。 華倫変についてはまた改めて書かなくてはいけないようです。 他の作品についても、そして彼の死についても。 まったく、まとまっていませんが、とりあえず華倫変レビューの第1回はここまで。 また次回を近いうちに書きます。
by pulog
| 2004-07-12 23:37
| マンガ・アニメ
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